近年、地震や台風、大雨洪水による河川の氾濫、土砂崩れなどで停電して電化製品が使えなくなったり、水道から水が出てこなくなったというニュースをよく耳にします。
実際に、我が家も地震や断水を経験したことがあるのですが、我が家では車載インバーター(純正弦波、定格1500W、瞬間最大3000W、約2万円)と井戸ポンプがあるため、停電していても自家発電して家電製品を動かすことができますし、その電気を使って井戸ポンプを動かし井戸水を得ることができます。
そこで今回は、この車載インバーターを使って災害時に自家発電する具体的な方法について、詳しくお話していきます。
車載インバーターによる自家発電で必要なもの
まずはじめに、車載インバーターによる自家発電で必要なものについてお話していきます。
自動車
まずはじめに必要なものとして挙げられるのが自動車です。
車載インバーターを使うので自動車が必要というのは当たり前ですね。
自家発電といえばガソリンで動く小型なタイプのものや、太陽光パネルで作った電気をバッテリーに貯めておくようなものをイメージする人が多いと思います。
よく考えてみてほしいのですが、自家発電機の場合、長期間動かしていないと燃料が劣化してキャブレターをオーバーホール(バラバラに分解して洗浄すること)する必要があったり、発電機に入れておく燃料(携行缶で保存する)を事前に購入して保管しておく必要がありますし、太陽光パネルによる自家発電システムの場合、設置に数十万円の費用がかかったりしてしまうというデメリットがあります。
でも、自動車の場合、普段からエンジンをかけて燃料を消費しているため、燃料が古くなってエンジンがかからなくなる可能性は少ないですし、ガソリンが半分ぐらいに減ったら給油するというルールを作っておけば、常に数十リットルのガソリンを車のガソリンタンクの中に保管しておくことが可能です。
自動車のアイドリング時の燃費は以下のようになっています。
- 軽自動車(660cc) → 750cc/1h
- コンパクトカー(1500cc) → 840cc/1h
- 普通車(1800cc) → 900cc/1h
- 普通車(2400cc) → 1020cc/1h
- 小型発電機(ヤマハ EF2000iS)→ 830~1430cc/1h
ちなみに、燃費の良い小型発電機のデータも記載しておきますが、車のアイドリング時の燃費は発電機の燃費とほぼ同じぐらいと思っておけばOKで、計画的にエンジンをかけて発電してやれば(エンジンをかけずに電気を使うとバッテリーが上がってしまうため)、1週間程度は燃料タンクの中にあるガソリンを使って必要な分の電気を作ることができます。
なお、最終的に供給できる電力の大きさは、車に搭載されている発電機(オルタネーター)の大きさ(発電電流、〇〇A、排気量の大きな車ほど大きなオルタネーターが搭載されている傾向がある)によって決まってきます。
- 軽自動車 → 約50A(定格値)
- 普通車 → 約80A(定格値)
- 大型車、寒冷地仕様車 → 100~150A(定格値)
なお、アイドリング中の発電電流は定格電流(走行時のもの)の半分ぐらいとなりますので、実際の発電電流は以下のようになるでしょう。
- 軽自動車 → 約25A
- 普通車 → 約40A
- 大型車、寒冷地仕様車 → 50~75A
電力は電圧(12V)と電流をかけ合わせたものになりますので、愛車がアイドリングで連続して発電できる電力の値(VA≒Wと考えておく)を計算しておきましょう。
- 軽自動車 → 約300VA
- 普通車 → 約480VA
- 大型車、寒冷地仕様車 → 600~900VA
このように、自動車はアイドリングだけで上記のような電気を連続して発電することができます。
ざっくりとした話となりましたが、この段階では自動車には電気を生み出す仕組みがすでに備わっているということを理解しておきましょう。
インバーター
上記までの話で、車には自家発電に必要なエンジンと発電機(オルタネーターという部品)が内蔵されていることがわかってきたと思います。
ただ、そこで作られる電気は直流の12Vとなっているため、その電気を電化製品が動かせるような交流の100Vに変換する必要があります。
そのために使う装置がDC/ACインバーターと呼ばれるものです。
ただ、このインバーターの選定がなかなか難しくて、適当に購入してしまうと動かそうと思った機械が動かなかったということになることがよくあります。
インバーターの選定のポイントは大きく分けて容量(定格、最大)と変換後の波形タイプの2つがあります。
まず、インバーターの容量についてですが、これは使用したいと思っている家電製品の消費電力をカバーできるだけの変換容量を持つインバーターを選ぶ必要があります。
例えば、400Wの家電製品を使いたいと思ったら、定格400W以上のインバーターを選べばOKです・・・と言いたいところですが、そうではありません。
実は、電化製品の中には始動時に大きな電力を必要とするものがあり、例えば、井戸ポンプなどのモーターの場合、始動時に必要な電力(起動電力)は定格消費電力の2~4倍程度が必要となります。
今回の場合、消費電力が400Wの井戸ポンプを動かしたいので、その4倍となる1600Wぐらいの変換能力のあるインバーターを選択する必要があるということになります。
また、インバーターの選定ポイントの2つ目に挙げていた変換後の波形についてですが、車載タイプのインバーターには、値段の安い矩形波(準正弦波、修正正弦波など)や疑似正弦波を出力するタイプのものと、値段は高いがきれいな正弦波(サイン波、純正弦波など)を出力するタイプのものがあります。
家のコンセントに流れている電気はきれいな正弦波を描いているため、家電製品はそのような正弦波の電気で動くことを前提に設計されています。
ここで問題になってくるのは、正弦波ではなく矩形波や疑似正弦波などで家電製品を動かすと一体どうなるのかということなのですが、矩形波や疑似正弦波では家電製品が動かなかったりすることがあります。
ACモーターを使った古いタイプの井戸ポンプの場合は、矩形波や疑似正弦波のものでも対応可能なことが多いですが、インバータータイプのDCモーターを使ったものの場合、矩形波や疑似正弦波ではうまく動かないこともあります。
また、停電時に井戸ポンプだけではなく、その他の電化製品を使うことを検討している場合は、値段が高くなってしまいますが純正弦波タイプのインバーターを購入しておくことをお勧めします。
ちなみに、今回使用したのは12Vバッテリーに対応した純正弦波タイプの定格1500W(最大3000W)の車載インバーターです。
出典)インバーター 12V 正弦波 1500W DC 12V を100V 110V ACへ変換 50Hz/60Hz LCDディスプレイ及びリモコン搭載 ハンドル12v 電源 EDECOA|Amazon
瞬間的であれば最大3000Wまで対応できますので、井戸ポンプ(始動電力が約1600W、定格消費電力は400W)と一緒に別の家電を作動させても大丈夫です。
いざ停電が起こったときに「使いたかったものが使えない・・・」ということにならないように、DC/ACインバーターは純正弦波タイプの余裕を持った容量のものを選んで購入することをお勧めします。
ここで思い出してほしいことは、自動車の発電量が仮に普通車の480VA(≒W)であるとする場合、瞬間的に始動電力が1600W必要になった場合、電気が居給できないのではないかと思われるかもしれませんが、自動車には発電機(オルタネーター)だけではなく、電気を蓄えているバッテリーも搭載されているため、一瞬だけならそのバッテリーの電気を消費することによって井戸ポンプを始動することができます。
ただし、井戸ポンプの消費電力400Wに対して、軽自動車の発電量300VA(≒W)の場合、消費電力より発電量が小さくなるため、常にバッテリーに蓄えてあった電気を使わなければ井戸ポンプを動かせないという状態のため、最終的にはバッテリーが上がってしまい、車のエンジンがかからなくなってしまいます。
ですので、できる限り井戸ポンプの消費電力より、自動車のオルタネーターの発電量のほうが大きい状態(排気量の大きな車を選んで使う)ようにしておきましょう。
ちなみに、最近ではハイブリッド車やアイドリングストップ車、充電制御車など、省燃費を達成するためにいろいろな機能を搭載した車が増えてきました。
インバーターを購入する前に、アイドリングを任意継続すること(オルタネーターで発電し続けるために必要)は可能か、アイドリング中にバッテリーの電圧が14.5V前後(エンジン停止中は12~13V程度、オルタネーターで発電しているときは電圧が上がる)を保っているかをテスターなどを使って確認しておきましょう。
テスターがOFFの状態
テスターのつまみをDCV(直流)に合わせる
エンジンOFF時のバッテリーの電圧を測定(12.5V前後)
エンジンON時のバッテリーの電圧を測定(14.5V前後)
このように、エンジンをONしてアイドリングしている間、電圧が常に14.5V前後を保っているようであれば、オルタネーターがちゃんと発電している状態ですので、ご参考まで。
車載用インバーターの具体的な設置手順
ここからは、車載用インバーターの設置手順についてお話していきます。
電源コードを加工する
今回使用したインバーターに付属している配線の先端は両端とも丸型の端子となっていました。
インバーターを定置固定して使用する場合はこのまま使用すればいいのですが、私の場合、非常時やキャンプなど、たまにしか使うことがないため、配線の片方をバッテリークリップに付け替えました。
事前に購入しておいたバッテリークリップのカバーを取り、そこにインバーターに付属していた配線をネジでしっかりと固定します。
なお、車内にあるシガーライターソケットから電源を取ることはできないのかということについてですが、バッテリーとインバーターの間はかなりの電流が流れる(例えば、400Wの井戸ポンプの場合でも約33Aも電流が流れる、シガーライターのヒューズは10~15Aが基本)ため、シガーソケットを使って電源を得る方法は150~200W程度のインバーターが限度と考えておきましょう。
インバーターの設置場所を決める
次に、どこにインバーターを設置するか考えていきます。
自動車のエンジンルームには広くて平らなところはなく、また熱気が下から上がってくるため直接エンジンの上に置いてしまうとインバーターの温度が上がってしまいます。
いろいろと検討した結果、インバーターはS字フックなどでボンネットのロック部に引っ掛けて吊り下げて使うことにしました。
こうしてやれば直接エンジンの熱風がインバーターに当たることはありませんし、設置や片付けも簡単です。
インバーターにバッテリー側配線を接続する
次は、インバーターとバッテリーを繋ぐ配線を接続していきます。
まず、インバーターの裏側に先程作っておいた配線を取り付けていきます。
インバーターに配線を取り付けることができたら、そのままの状態で車のボンネットに吊り下げていきましょう。
クリップでバッテリー端子を挟み込む
後は、マイナス側からプラス側という順番でバッテリ端子にクリップを取り付けていきます。
エンジンを始動して、インバーターの電源を入れる
次に、車のエンジンを始動して、インバーターの正面にある電源スイッチをONにします。
インバーターのスイッチがOFFの状態
インバーターのスイッチがONの状態
インバーターのスイッチを入れると2~3秒ほどで、正面パネルにあるコンセントに100Vの電気が供給され始めます。
井戸ポンプを延長コードで接続する
後は延長コードを使って井戸ポンプとインバーターを接続します。
すると、井戸ポンプがブゥーンという音を立てて、動き始めました。
井戸ポンプが動いているときのバッテリの電圧は14.2Vと少し電圧が下がりましたが、エンジン停止時のバッテリーの電圧を下回らなければバッテリーから電気を持ち出しはないと考えて良いので、まだまだ余裕があるという感じです。
最後に一言
今回は、【断水停電対策】井戸ポンプを車載タイプのインバーターで動かす方法についてお話しました。
車載インバーターの使用には少し電気の知識がいりますが、それを理解することができれば約2万円ほどで1500Wの自家発電設備を簡単に手に入れることができます。
断水時は飲水が不足するだけではなく、手洗いの水洗が使えなくなるなど、衛生面で不便することが多くなります。
災害発生時に自家発電で井戸ポンプが動いてくれれば生活がかなり楽になりますので、是非参考にしてみてくださいね。
それでは!