井戸水の中のピロリ菌を完全に除去する方法

皆さんは、井戸水の中にピロリ菌と呼ばれる胃がんや胃潰瘍などのリスクになるとされている菌がいるかもしれないことをご存知でしょうか?

ピロリ菌(Helicobacter pylori)とは、胃の粘膜に感染し、胃炎や胃十二指腸潰瘍のみならず、胃がんや特発性血小板減少性紫斑病などさまざまな病気を発症させる菌です。

感染経路としては、経口感染(感染している親からの離乳食の口移しなどが原因。)や井戸水によるものがほとんどで、多くは5歳くらいまでの幼少期に感染しています。

そのため衛生環境が整備される以前に幼少期を過ごされた年齢の方、およそ40歳以上の方では、約7割の方が感染しているといわれています。

出典)胃内視鏡におけるピロリ菌除菌の流れ|おおさわ胃腸肛門クリニック

ピロリ菌の感染は、人から人(経口感染)が有力ですが、井戸水の中にもピロリ菌がいるというデータが多々あります。

浅井戸と深いどのピロリ菌の有無

出典 Association between prevalence of Helicobacter pyloriinfection and water-related factors

今回は、井戸水の中にピロリ菌があるかどうかということや、それに対する各団体の見解、そして井戸水のピロリ菌を除去する方法についてまとめました。

日本地下水学会の見解

まずはじめにお話しておきたいことは、井戸水などの利用を推進している日本地下水学会のホームページの中にあるピロリ菌に関するQ&Aです。

■地下水飲んだらピロリ菌に感染するんですか?

40歳以上の日本人は約75%の人がピロリ菌に感染しており(出典:ピロリ菌ドットねっと)、感染源は、家族内での幼少期に母親から子供への感染が主体と言われています。

地下水からピロリ菌に感染するという情報は、地下水学会としては持ち合わせていません。

ピロリ菌については、専門の学術団体である日本ヘリコバクター学会、あるいは日本消化器病学会にお問いする方が良いと思います。

なお、全国各地に名水と称する湧水、あるいは井戸水がたくさんありますが、水系感染症を引き起こす原因物質である大腸菌、一般細菌が含まれている可能性があります。

いわゆる、「美味しい水」、「健康によい水」と噂される水と衛生的な水質とは直接関係がありません。

もちろん地元の自治体なども水質検査は行っていないことが普通です。

環境省が制定した「日本の名水」のいくつかに大腸菌が含まれていることは衆知のことです。

出典 日本地下水学会

日本地下水学会が井戸水の中からのピロリ菌感染に対する見解を示さず避けているということは、井戸水の中にピロリ菌がいないということはなさそうですね。

井戸水内のピロリ菌に関する研究

実は、人が井戸水からピロリ菌に感染するということは、いくつかの論文で知られているようです。

ただ、浅井戸は井戸水が汚染されやすいが、深井戸ならピロリ菌はいないのではないか・・・ そんなふうに考えている人もいると思います。

色々と調べてみると、米国国立医学図書館のデータベース(PubMed)の中にある井戸の深さに関するピロリ菌の有無に関する論文がありましたので、その内容について紹介します。

>>Brown LN et al.:Helicobacter pylori infection in rural China: demographic, lifestyle and environmental factors. Int J Epidemiol. 2002 ;31. 638-45.

この研究は米国がん研究所による中国における研究で、個人の深井戸、共同の深井戸、個人の浅井戸、共同の浅井戸に分けて、それぞれの利用者のピロリ菌感染率を調査しています。

浅井戸と深いどのピロリ菌の有無

出典 Association between prevalence of Helicobacter pyloriinfection and water-related factors

調査結果を見てみると、個人の深井戸59.0%、共同の深井戸66.7%、個人の浅井戸64.7%、共同の浅井戸72.2%となっています。

統計学的には、個人の深井戸と個人の浅井戸の間には有意差はなく、個人の深井戸と共同の浅井戸の間にだけ有意差があります。

傾向としては深井戸(深さについての記載無し)の方がピロリ菌がいる確率が低いようですが、その深井戸でも半数以上の井戸にピロリ菌がいることになります。

上水道の整備とピロリ菌の感染率について

上水道の整備が進むにつれてピロリ菌に感染する人が減ってきているというデータがありました。

日本のピロリ菌感染率と将来予測

わが国では、上下水道が十分完備されていなかった戦後の時代に生まれ育った団塊の世代以前の人のピロリ感染率は約80%前後と高いのですが、衛生状態のよい環境で育った若い世代の感染率は年々低くなり、10代、20代では欧米とほどんどかわらなくなってきました。

また、ピロリ菌感染を予防する方法は、よくわかっていません。

親から子へのたべものの口移しには注意が必要でしょう。

上下水道が完備され衛生環境が整った現代ではピロリ菌の感染率は著しく低下しており、予防についてあまり神経質にならなくてもよいでしょう。

出典 ピロリ菌のお話.jp
http://www.pylori-story.jp/pylori/prevention/

2010年のデータを見ると、40代以降の世代の人がピロリ菌に感染している割合が高いことが分かります。

この結果と、厚生労働省が発行している上水道の普及率の統計を比較してみると、そのことが良く分かります。

井戸水の上下水道普及率

出典 水道普及率の推移(厚生労働省)

このデータを見ると、日本の上水道は1980年ごろには90%以上に普及しています。

つまり、2010年で30代の人のほとんどは整備された上水道を飲んでおり、その結果ピロリ菌に感染しなくて済んだのではないかという推測です。

この話から、ピロリ菌の感染を避けたいのであれば、井戸水を飲まないほうがいいという結論が導かれます。

井戸水のピロリ菌の有無を検査する方法

そうは言っても実際に飲んでみるとおいしいということが分かっている井戸水。

では、井戸水にピロリ菌がいるのかどうかを調べる方法は無いのでしょうか?

実は、以前私の井戸で水質検査をした時に聞いてみたのですが、一般の人向けに特定の菌があるかどうかを調べるサービスを提供しているところはないそうです。

しかし、一般的な水質検査で「一般細菌」という項目があり、この一般細菌が「ゼロ」であれば、ピロリ菌を含むほぼ全ての菌がいないことになりますから、井戸水の中にピロリ菌がいるかどうかは、この「一般細菌」の項目を活用するのはいかがでしょうか?

一般細菌とは?

一般細菌検査の導入はRobert Kochの発案によるもので、一般細菌数が100/ml以下の状態ではコレラ患者の発生がないという事実に基づいたものです。標準寒天培地を用いて36±1℃で24±2時間培養したとき、培地に集落を形成するすべての細菌を指します。つまり、従属栄養細菌のうち、温血動物の体温前後で比較的短時間に集落を形成する細菌です。従って、分類学的に特定の菌または1つのグループを指したものではなく、また水中の生菌の総数を示すものでもありません。清涼な水には少なく、汚染された水ほど多い傾向があるため、水の汚染状況や飲料水の安全性を判定する上で有効な指標です。

出典 http://www.senlights.co.jp

ピロリ菌の殺菌方法

ピロリ菌は煮沸や塩素消毒で殺菌することができます。

【殺菌方法その1】煮沸

一般的に細菌は煮沸するなど、熱を加えることによって殺菌できます。

熱水や蒸気を用いて65~100℃の温度で処理する方法は、有効で安全かつ経済的な消毒法である。例えば80℃10分間の処理により、芽胞を除くほとんどの栄養型細菌、結核菌、真菌、ウイルスを感染可能な水準以下に死滅または不活性化することができる。

引用)II 滅菌法・消毒法概説|Y’s Square

上記の引用文にもあるように「芽胞を除く」ということについて、芽胞とは細菌の種のようなもので非常に熱に強いのが特徴です。

ただし、ピロリ菌は芽胞を作る種類の菌ではないので、一般的な金と同様に煮沸するなどすれば不活性化することが可能と言われています。

逆に、ピロリ菌は熱や乾燥に弱い菌なので、ピロリ菌を使った実験などを行う際は、すぐに冷蔵庫に入れて冷やすなどの工夫が必要な程です。

ですので、ピロリ菌が含まれているかもしれない井戸水を引用する場合は、煮沸して飲むようにするのがベターです。


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【殺菌方法その2】塩素消毒

ピロリ菌は塩素消毒によって殺菌する事が出来ます。

なので、ピロリ菌のいない水を飲みたいのであれば、塩素消毒されている一般の水道水を飲むのがベストなのかもしれません。

どうしても井戸水を飲みたい場合は、下記のような井戸水を塩素消毒する設備を取り付ければ良いのではないでしょうか?

ですから、井戸水のピロリ菌を殺菌するのではなく、細菌類も濾し取れる逆浸透膜式の浄水器でピロリ菌を除去するほうがトータルコストとしては安くつくかもしれません。

ただし、設置コストが高いことと、塩素消毒するための塩素希釈液を補充する手間がありますから、あまりオススメはできません。

井戸水専用の浄水器について、詳しく解説した記事はこちら。

■井戸水専用の浄水器を買う前に知っておきたい3つのこと
https://idohori.nagoya/idomizu-zyousuiki/

この記事の中でも解説していますが、最新の浄水器を使えば、ピロリ菌はもちろんのこと、ほぼ全ての不純物を取り除くことができます。

ただ、そんな浄水を飲むためには、それなりのコスト(設置、ランニング)が必要になるため、浄水器の特性をしっかりと理解した上で、井戸水を浄水して飲むか、一般的な水質検査に通ればOKとするか、または井戸水を飲用以外の用途(エアコンの節電など)に使うか、あなたが決めればいいと思います。

最後に一言

今回は、井戸水の中のピロリ菌を完全に除去する方法についてお話しました。

井戸水の中にピロリ菌がいる可能性は常にありますし、お金をかければそれを除去する方法もあります。

このように井戸水にはメリットだけではなく、さまざまなデメリットも存在していて、更にいい井戸水が出るかどうかは、井戸を掘ってみないと分かりません。

そんなの嫌だって人は、井戸は諦めましょう。

でも、そんな井戸水のメリットやデメリットを知っても、井戸水に憧れ、井戸水を生活に取り入れたいと感じているのであれば、ぜひ一緒に井戸水生活を始めましょう。

それでは!

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