井戸水を汲み上げることができる井戸ポンプの中には家庭でも使えるタイプのものもあり、ネットショップや近所のホームセンターなどで購入することができます。
井戸ポンプが故障したので交換したり、新たに井戸を掘って井戸ポンプを設置したりしたいと考えている場合、井戸ポンプにはどのような種類があって、どのような観点で選んでいけばいいのかよく分からず、困ってしまうものと思います。
そこで今回は、家庭用の井戸ポンプの種類の解説から購入時の選び方、DIY設置の具体例まで詳しくお話していきます。
なお、自分で井戸掘りと井戸ポンプ設置を行いたい場合は、以下の記事が参考になると思います。
>>【完全保存版】素人1人でも出来るDIY打ち抜き井戸掘りマニュアル
>>【失敗する前に・・・】井戸水のメリットとデメリットまとめ
井戸ポンプの種類
井戸ポンプは、設置する井戸の深さ(地面に掘られた穴の深さ)によって使用できる種類が大きく分かれます。
- 井戸の深さが8~9m以下
→浅井戸ポンプ(手押しポンプ、電動ポンプ) - 井戸の深さが10m以上
→深井戸ポンプ(ジェット式電動ポンプ、水中式電動ポンプ)
浅井戸ポンプについて
井戸の深さが8~9m以下の場合、ポンプが吸込み配管内の空気を吸い上げて配管内を真空にしていくだけで井戸水を地面上にあるポンプ可動部まで吸い上げてくることが可能です。
それに対して、井戸の深さが10m以上になるとただ配管内を真空にしただけでは井戸水は水面から8~9mほどしか上がることができない(ポンプが空気を吸い上げる力と井戸水が下に下がろうとする力が釣り合う)ため、井戸水を汲み上げることはできなくなってしまいます。
この井戸水の吸い上げメカニズムは手動タイプ井戸ポンプ(ピストンポンプ)でも同様で、最初に呼び水を入れて手でポンプを何度も動かさないと井戸水が出てこないというのは、吸込み配管内の空気を抜いて真空にしていく作業となっています。
井戸水の吸い上げ量については、井戸水の推移や井戸の深さなど条件によって変動しますが10~40L/分ほどになります。
電動井戸ポンプには井戸の深さが10m以上でも井戸水を汲み上げることができるタイプ(深井戸ポンプ)がありますが、手動井戸ポンプは井戸の深さが8~9mまでが限度となります。
裏技としては、手動ポンプに特殊な吸い上げ延長配管をつければより深いところからも水を汲み上げることは可能ですが、その分レバーを動かす力も重たくなりますので、現実的にはあまりおすすめできません。
浅井戸ポンプを選ぶメリットは、深井戸ポンプより価格が安く、消費電力も小さく、吸込み側配管(井戸に突っ込む方)も1本しかなく施工も簡単という特徴があります。
特に手動の井戸ポンプの場合は電源が不要となるため、災害が発生して停電した場合でも普段と同じように井戸水を汲み上げることができるのがメリットといえます。
>>【断水停電対策】電動浅井戸ポンプを車載タイプのインバーターで動かす方法
浅井戸ポンプのデメリットは、井戸深さが10m以上の場合は井戸水を吸い上げられないこと、手動の場合は井戸水を汲み上げるために力が必要ということが挙げられます。
特に手動井戸ポンプの場合、子供たちが遊びで砂や石を井戸ポンプの中に入れてしまってその度に井戸ポンプを掃除しなければならなかったり、レバー部分で手を挟んでしまって怪我をするという事もあったりします。
防災井戸としての活用はほとんど想定しておらず、井戸水を普段から頻繁に使うような場合は電動タイプの朝井戸ポンプを選んだほうがいいと思います。
ちなみに、井戸ポンプは使っていくうちに井戸水を汲み上げる部分のパーツが削れたりしてヘタってくるため、井戸深さが7~9mもあると取り付けて何年か経過すると井戸水が出なくなるということもあったりします。
ですので、井戸の深さが6mを超えてくるような場合は、浅井戸ポンプではなく深井戸ポンプ(ジェット式)の方を選んでおくというのも一つの手です。
深井戸ポンプについて
井戸の深さが10m以上の場合、浅井戸ポンプでは水を吸い上げることができないため深井戸ポンプで井戸水を汲み上げる必要があります。
その深井戸ポンプはジェット式と水中ポンプ式の2種類に分かれます。
ジェット式井戸ポンプ
ジェット式の井戸ポンプは、圧力管から送られた高圧の水がノズル部から高速噴射され、それに巻き込まれる形で井戸の底にある水を引っ張り上げる(ベンチュリ効果)ことにより吸込管から水を汲み上げるという仕組みになっています。
ジェット式の場合、吸込管から汲み上げた井戸水はまた圧力管から送り出されて新たに吸い出された井戸水と一緒に吸込管から戻ってくるという循環を繰り返しながら井戸水を汲み上げています。
ジェット式井戸ポンプの井戸水の汲み上げ量は5~30L/分程度で、汲み上げ高さは一般的には8~20mが主流ですが、浅井戸にも対応するタイプ(6~8m以内)のものも存在しています。
ジェット式井戸ポンプのメリットは、幅広い井戸の深さに対応することができることとなっています。
逆に、ジェット式井戸ポンプのデメリットは、圧力管に送る高圧水を作り出すためのポンプの作動音が大きいこと、消費電力が大きいこと、井戸に挿入する配管が2本になるため井戸の内径が大きい必要があること、同じ消費電力であれば次に紹介する水中ポンプ式の方が効率良く井戸水を汲み上げることが出来るということなどが挙げられます。
水中ポンプ式井戸ポンプ
水中ポンプ式の深井戸ポンプは井戸の中にポンプ駆動部を入れ、井戸の下部から井戸水を押し上げるという仕組みで動いています。
水中の中にポンプを設置するという構造であるため、300m以上深いところからも井戸水の吸い上げが可能で、井戸水の汲み上げ量についてもポンプの出力や能力(ポンプの種類)を変えることで数十リットルから数千リットルまで対応することができます。
- 低揚程(低圧力)&大水量の場合
→渦巻ポンプ(ボリュートポンプ) - 高揚程(高圧力)&少水量の場合
→渦流ポンプ(カスケードポンプ)
設置できる井戸のパイプ径はφ100~400mmとなっているため、あまりにも井戸の内径が小さい場合には設置することはできません。
この水中ポンプ式深井戸ポンプのメリットは、深い井戸にも対応出来るということ、大水量にも対応できるということ、動作音が小さいということ等が挙げられます。
逆に、デメリットとしては、あまりにも内径の小さな井戸には設置できないということ、水中ポンプが砂を吸い込んだり、また水中ポンプが異常に加熱してしまわないように井戸の形状や深さを工夫しなければならないという点が挙げられます。
具体的な井戸ポンプの選定方法
井戸ポンプの選定方法は、シチュエーションによって大きく2つのやり方に分かれてきます。
- 既設井戸ポンプ故障による交換設置する場合
→既設ポンプの型番や仕様書から交換用ポンプを選定する - 井戸掘りから井戸ポンプを新規設置する場合
→井戸の深さや使用水量、電源の有無、許認可の確認など検討して選定する
井戸ポンプを「交換設置」する場合
井戸ポンプが故障したことによって井戸ポンプを買い換える場合、井戸ポンプの取扱説明書、仕様書などを参考にそれと同等の井戸ポンプを選んでいけばOKです。
取扱説明書をなくしてしまった場合は、井戸ポンプの本体に貼り付けられているシールに型番が記載されていますので、その情報をネット検索すれば取扱説明書や仕様書などを手に入れる事ができたりします。
注意しなければならない点としては、こういった各種仕様はほぼ同じでも配管の取り付け位置が違っていたり、電源配線長さなどが違っているということがよくありますので、その辺のチェックもしっかりと行っておいてください。
具体的な取り付け方としては、浅井戸ポンプやジェット式井戸ポンプの場合は井戸ポンプにつながる配管をそれぞれ取外して新しい井戸ポンプに接続し直すだけでOKです。
井戸ポンプ交換後の初回運転時は呼び水をポンプ上部の注水口に入れて、電源を入れて2~3分ほど動かせば井戸水が出てくるようになります。
ただし、水中ポンプ式の深井戸ポンプの場合、井戸の底に水中ポンプがあり、その部分も交換しなければならないため、井戸上部を少し解体して水中ポンプを取り出して交換するという作業も加わります。
深井戸の場合、数十メートルの穴深さがあるため素人ではポンプを取り出すのはかなり難しくなってきますので、こういった場合は業者にお願いしたほうがいいと思います。
井戸水の出が悪くなったために井戸ポンプを交換しようと検討している場合、不具合の原因が井戸ポンプ以外にもある可能性があります。
以下の記事が参考になると思いますので、一度確認しておくことをおすすめします。
>>井戸ポンプが故障?急に井戸水が出なくなる5つの原因とその対処法
井戸ポンプを「新規設置」する場合
井戸ポンプを新規設置する場合は、交換設置する場合より少し考えるべきことが増えますが、家庭用の井戸ポンプの場合は選択肢がそこまで多いわけではないので、順番に考えていけば適切な井戸ポンプを選び出すことができます。
- 井戸深さで井戸ポンプのタイプを決める
- 吐出配管の内径を決める
- 電源電圧と周波数を決める
- インバータータイプまたは一定速タイプを決める
井戸深さで井戸ポンプのタイプを決める
まず、井戸の深さによって井戸ポンプのタイプを決めていきます。
- 井戸深さが6m以内
→浅井戸ポンプ(電動、手動) - 井戸深さが6~8m
→ジェット式井戸ポンプ - 井戸深さが8~20m
→ジェット式井戸ポンプ、(または、騒音が気になる場合は水中ポンプ式井戸ポンプも可能) - 井戸深さが20m以上
→水中ポンプ式井戸ポンプ
井戸の深さが6m以内であれば、一般的な浅井戸ポンプ(電動または手動レバー)を選べばOKです。
井戸深さが6mを超えて8mぐらいの場合は、浅井戸ポンプでもなんとか井戸水を汲み上げることは可能ですが、使用条件によっては井戸水を汲み上げられなくなることがありますので、ジェット式の井戸ポンプを選んでおくのがいいでしょう。
井戸深さが8~20mの場合は基本的には価格が安いジェット式井戸ポンプ、騒音が気になる場合は少し高価になりますが水中ポンプ式井戸ポンプを選ぶのもいいと思います。
井戸深さが20mを超えてくるような場合、水中ポンプ式井戸ポンプを選ぶ必要があります。
吐出配管の内径と定格出力を決める
井戸ポンプを設置する際、井戸水の汲み上げ規制などクリアする必要があります。
>>【DIY井戸掘り】ポンプ設置や下水道排水に必要な申請許可まとめ
特に都市部などでは井戸水の汲み上げ規制が厳しいところが多いですので、一度上記の記事などを参考にお住いの地域の各種届出、許認可の内容を確認しておくのがいいでしょう。
一般的には井戸水汲み上げ規制の対象となるかどうかを判断するのは井戸ポンプの出力(消費電力ではない)と井戸ポンプの吐出側配管径となっています。
以下の条件を満たす井戸ポンプであれば、ほとんどの地域で届出など不要になリます。
- 井戸ポンプ出力
→300W以下 - 井戸ポンプ吐出配管
→6c㎡以下(内径の直径が27mm以下)、吐出側配管サイズが25AなどであればOK
このような視点を持って井戸ポンプの機種を大雑把に絞り込んでいくのがいいのではないかと思います。
最近ヤフオクなどで格安の浅井戸ポンプ(約15000円、中国製)が販売されていたりしますが、配管は25mm規格なのですが、出力が370Wになっているので、都市部など一部地域では規制に引っかかってくる可能性があります。
ものとしては価格の割に十分に使える商品でしたので、田舎など規制がない地域等の場合はそのような井戸ポンプを使っていってもいいと思います。
ちなみに、仕様書や井戸ポンプ本体に貼られている吐出側配管サイズ25Aというのは、塩ビ給水配管VP25(内径が25mmの配管)に接続していくことが出来るという意味です。
古いタイプの井戸ポンプの場合はそういうような表記になっていることが多いので、ここで理解しておきましょう。
電源電圧と周波数を決める
一般的な家電製品は電圧が100Vで周波数が50~60Hzであれば日本中どこでも使えるというものが多いですが、井戸ポンプの場合は電源電圧と周波数毎に製品が分かれています。
ですので、井戸ポンプに電源を供給するコンセントの電圧(単相100V、単相200Vなど)と、電源周波数(東日本;50Hz、西日本;60Hz)を確認して、それに適合した井戸ポンプを選んでいきましょう。
こういった電源コンセントの仕様についてはテスターを使って調べるのが一番確実ですが、以下の方法でも確認することができます。
電源電圧の調べ方
電源電圧の調べ方については、以下のようにコンセント形状から推定することができます。
電源周波数の調べ方
電源周波数については、以下のページで詳細を確認することができます。
最近では、どちらの周波数にも対応した井戸ポンプが多くなってきたので、電圧の方だけを気にしておけばいいような状況になってきています。
ただ、中古品を買う場合はまだ特定の周波数にしか対応していない製品があったりしますので、そういう場合は電圧だけではなく周波数についても注意するようにしましょう。
インバータータイプまたは一定速タイプを決める
井戸ポンプには、ポンプの回転数を変速することが出来るインバータータイプとポンプ回転数が一定の定速タイプが存在します。
インバータータイプは井戸水の蛇口開度に応じて井戸ポンプの回転数も随時調整してくれるため、様々な流量で使っても最終的に蛇口を閉じるまで井戸ポンプはずっと動きっぱなしというイメージです。
また常に全速運転する一定速タイプに対して、井戸ポンプはポンプ回転数を抑えることが出来るため、比較的少なめの流量で長い時間使うというような場合は省エネ効果も期待できます。
それに対して、昔ながらの一定速タイプの井戸ポンプはタンク内圧力が上がると止まり、タンク内圧力が下がると駆動するということを繰り返して井戸水を汲み上げていきます。
常に蛇口を全開にして使用するような場合は、一定速タイプも常に作動し続けるため消費電力はインバータータイプとそこまで変わらないのですが、蛇口を少し絞って使うような場合、一定タイプはON/OFFを繰り返してしまうため消費電力が大きくなってしまう傾向があります。
ただ、一定速タイプは価格が安く、構造もシンプルなので壊れにくいというのがメリットになります。
こういったことを理解した上で、使用条件や値段と相談しながら選んでいくといいでしょう。
井戸ポンプの具体的な設置方法について
ここからは、井戸ポンプの具体的な設置方法についてお話していきます。
井戸ポンプの設置は大きく分けて、以下の2STEPで進めていきます。
- 地下水が湧き出るところまで井戸を掘る
- 井戸ポンプを設置する
業者に井戸ポンプの設置を依頼した場合、井戸掘りと井戸ポンプの設置がコミコミの価格になることが多く、事前に見積もりすることでおおよその工事費用を知ることができます。
>>【最安値約20万円~】井戸掘りを業者に依頼するときの費用と注意点
この他に、やる気がある人であれば自分で井戸を掘って井戸ポンプを設置するという選択肢もあります。
その様子について以下に記載しておきますので参考にしてみてください。
井戸を掘る
井戸ポンプは地面の下を流れる地下水を汲み上げるためのポンプですので、井戸ポンプを設置するには地下水が出るところまで井戸掘りをする必要があります。
どれぐらいの深さまで掘り進めれば地下水が出るかということについては地域によって異りますが、近所に井戸や井戸ポンプがたくさん設置されているような場合は6~7mほど掘れば井戸水が出ることが多いと思われいます。
それぐらいの深さであれば、打ち抜き井戸という工法で、太めの塩ビパイプの鞘管と自作の井戸掘り器を使って井戸を掘っていくことが可能です。
具体的な井戸掘りの方法が知りたい場合は、以下のページが参考になると思います。
>>【完全保存版】素人1人でも出来るDIY打ち抜き井戸掘りマニュアル
井戸ポンプを設置する
井戸が掘れたら井戸ポンプの設置となります。
掘った井戸に給水ホースを挿入し、それを井戸ポンプに接続します。
そして、吐出側にも塩ビパイプで配管を取り付け、蛇口を設置していきます。
あとは電源コードをコンセントに繋ぎ、井戸ポンプに呼び水を入れて始動すれば井戸水を汲み上げることができます。
このような流れで自分で井戸ポンプを設置していけば、4~5万円程度で井戸水が使えるようになります。
具体的な井戸ポンプの設置方法については、こちらの記事が参考になると思います。
最後に一言
今回は、井戸ポンプの種類と選び方、DIY設置方法まとめについてお話しました。
井戸ポンプには色んな種類があってよくわからないことも多いと思いますが、一つ一つ理解していけば適切なポンプを選べるようになっていきます。
ただ、予算にゆとりがあって時間があまりないような人の場合は、業者に来てもらって井戸ポンプを取り付けてもらうのが一番安心です。
ですが、どうしても予算的に余裕がなかったり、自分で設置するのが好きでやってみたいという場合は、浅井戸であればDIYも可能ですので、是非この記事を参考に挑戦してみて下さい。
それでは!