井戸水を水遊びや庭の散水に使うのであれば、汲み上げた水をそのまま使ってもいいと感じますが、いざその井戸水を飲用するとなると、ちょっとその水質が気になりますよね。
もちろん、井戸水を使用する前に水質検査を行って飲用しても良いレベルだったとしても、生水をそのまま飲むのは少し抵抗があります。
というのも、井戸水の中にはピロリ菌がいる可能性もあるということを聞いたことが合ったからです。
そこでこの記事では、井戸水を飲み水として利用するための浄水器のメカニズムや機能、設置方法などについてまとめています。
どうして井戸水に浄水器が必要なのか?
日本の上水道の給水人口は約97%になっていますが、残りの2~3%の人は水道水ではなく井戸水などを生活用水として活用しています。
問題は、井戸水の濁りや細菌、大腸菌、鉄やマンガン・硝酸態窒素など、身体にとって有害なものが井戸水の中に混ざっているケースが多々あり、組み上げた井戸水を安心して飲用水として活用する事ができていないということ。
そのことは、東京都健康安全研究センターが平成 20 年度に92箇所の井戸水の水質検査を実施した結果を見ればよくわかります。
平成 20 年度は 92 か所の井戸水について水道水質基準 30 項目の水質検査を行いました。
その結果、約 7 割が基準適合と判定されましたが、一つ以上の検査項目が水質基準値を超えた井戸は 27 か所(29.3%)ありました。
不適合の原因は主に細菌汚染によるもので、一般細菌及び大腸菌がそれぞれ 9及び 5 か所の井戸水から検出されました。
化学物質の汚染による不適合はテトラクロロエチレンとトリクロロエチレンによるものがそれぞれ 1か所でした。
さらに、平成 20 年度は金属類 11 項目の実態調査を行いました。
その結果、地質や配管の影響から井戸水に含まれることがあるヒ素、鉄(各1 か所)及びマンガン(7 か所)が基準値を超過していました。
出典 飲用井戸水の水質検査結果|東京都健康安全研究センター
この結果からわかるように「井戸水はきれい」というのは迷信のようなもので、きれいな井戸水が出るところもあれば、水質基準を上回る不純物を含んだ井戸水が出る井戸もあることを認識しておきましょう。
井戸水の浄水メカニズム
井戸水を浄水する方法は大きく分けて3種類あります。
活性炭フィルターによる浄水
まず一つ目は、活性炭に不純物を吸着させることで、水を浄水する方法です。
この方法は、高温で焼いた炭を細かく砕いたものをフィルターにしただけの物なので、安価でそこそこの浄水性能を持っているので、数年前までは活性炭フィルターを採用した浄水器が多く出回っていました。
この方式を採用した井戸水専用の浄水器で有名なのが日立の浄水器です。
この製品の仕様書はこちら↓
http://kadenfan.hitachi.co.jp/pump/pdf/PE-25W.pdf
仕様書を見てもらうとわかるのですが、濁りや匂いを完全に取り除くことができず、微細な30μm以下の細菌類などはフィルターを通過してしまいます。
それを回避するために、更に塩素消毒をして、活性炭フィルターを通過してしまった細菌を殺菌する装置もあります。
ですが、次亜塩素酸を定期的に投入したり、ランニングコストがかかってしますし、アレルギーの原因を引き起こす塩素を投入するのはやめたほうがいいでしょう。
活性炭フィルターを搭載した浄水器は飲み水を得るためではなく、お風呂や洗濯などの用途に使うのが良さそうです。
中空糸膜フィルターによる浄水
中空糸膜フィルターの特筆すべき機能は、フィルターの目の細かさです。
引用)浄水器(井戸水ろ過装置)について|株式会社エス・エス・エス
活性炭フィルターでは30μmの不純物を取り除くのが限界だったのに対して、中空糸膜フィルターでは、一般的な細菌類より目が細かくなっています。
このフィルターを使えば、水道水のように体によくない塩素を使って細菌を殺菌する事なく、一般的な細菌や大腸菌、残留塩素などを濾しとることができます。
ただし、それよりも小さな有害物質に関しては、中空糸膜を使っても取り除くことは出来ません。
また、フィルターの目が細かくなるほど、浄水の生成能力が低くなることを知っておきましょう。
例えば、先ほどの活性炭フィルターを搭載した日立ポンプの浄水器は40~60L/分の井戸水を浄水する事が出来ますが、この中空糸膜のフィルターでは2.0L/分の水しか浄水する事が出来ません。
このようにフィルターの目が細かくなるにつれ、井戸水がそのフィルターを通りにくくなっていきます。
逆浸透膜フィルターによる浄水
最近注目を集めているのがこの逆浸透膜フィルターです。
中空糸膜フィルターよりも更にフィルターの目が細かくなっていて、0.0001μmの不純物まで取り除くことが出来ます。
出典)逆浸透膜フィルター搭載の浄水器のすすめ|GUNJYO
このレベルになると、浄水器の蛇口から不純物がほとんど混じっていない純水が得られますから、井戸水が水質検査に不合格になったとしても、この浄水器を通すことによって、きれいな飲み水を得ることが出来ます。
ただし、得られる水量は3~4L/時程度なので、一度に沢山の水を使うお風呂などへの使用は実質的に不可能です。
ランニングコストは1L当たり10円程度ですから、ミネラルウォーターを購入するよりは安く飲み水を得ることが出来ます。
浄水器の取り付けに関する注意点
井戸から組み上げた水には、微細な砂や泥が混じっている場合があります。
これらの浄水器は水道水を浄水するための設計になっているので、砂などの大きな不純物が混じっていると、フィルターをすぐに詰まらしてしまうため、浄水器がうまく働かなくなる可能性があります。
必ず井戸ポンプと井戸の間に砂こし器を取り付けることをおすすめします。
井戸水を生活用水に使うのであれば先ほど紹介した活性炭フィルターの浄水器を井戸ポンプの直後に取り付け、そのフィルターを通った水を飲み水以外の生活用水として活用し、飲み水は台所に取り付けた逆浸透膜の浄水器から得るという構成がベストでしょう。
もちろん、活性炭フィルター+次亜塩素酸殺菌の組み合わせでも良いのですが、この次亜塩素酸が肌を傷つけアトピーの原因となっていることを考えると、次亜塩素酸が入った水でお風呂に入ったりするのはやめて置いたほうがいいのかもしれません。
次亜塩素酸とアトピーの関係を自分の体を使って検証している人がいたので、紹介しておきます。
■アトピー世界旅行記
http://atopy-worldtrip.com/
最後に一言
今回は、井戸水専用の浄水器を買う前に知っておきたいことについてお話しました。
この記事では、井戸水を浄水する事を前提に話を進めてきましたが、井戸水を浄水する設備を導入するかどうかを検討する前に、まず、その井戸水が飲用に適した水かどうか、水質検査を実施する事をオススメします。
水質検査を受けた結果、その水質が良く、浄水をする必要がない場合もあります。
簡易的な水質検査なら数千円で行えますし、主観で判断するより、このような客観的な水質のデータを見て、井戸水を浄水して飲用するかどうかを決めたほうがいいと思います。
まぁ、もし飲用を諦めたとしても、井戸水は色んな活用方法がありますから、落ち込まずに井戸水の可能性を探っていってくださいね。
それでは!